ルビーは希少なはずなのに、めっちゃ大きなルビーが驚くほど安く売られている…。それは一体どういうことなのでしょうか。「本当にルビーなの?」という疑問を今回は解決して参ります!
以前「ルビーの加熱、非加熱ってどういうこと?」という記事でルビーの処理についてご紹介しました。そちらと合わせて読んでいただくと用語などルビーのことがよりわかるようになるかもしれません。
日本市場に大きくて美しく、大変安価なルビーが急激に入ってきている。それらを蛍光X線分析装置で成分分析した結果、今までには無かった“鉛”が検出された。全てがファセット・カットされた良質なルビーで、3~5ctの大きさが中心だが、当研究所に鑑別依頼のあった中には13.83 cts というルビーでは考えられない程の大きなサイズもあった
出典:宝石学会(日本)講演会要旨
やはり、大きなルビーが安く出回っているというのは真実のようです。
鉛を含むルビーが安価に取引されているってどんな処理をしているのでしょうか。
まずは、ルビーの処理の方法から改めて確認していきます!
ルビーの処理方法
ルビーをはじめとする宝石には処理内容から、大きく分けて3つ種類があります。
出典:http://jewelry-musubu.com/musubu/?p=64
ノーヒート(=非加熱処理、天然)
元々発色の良い天然石をカットや研磨で形を整えるだけのもの。原石のままの輝き、透明度、発色です。
エンハンスメント(=加熱処理)
熱処理したもの。高熱を加えることでより良い発色が出ます。(人間でいうと、中途半端に日焼けした肌を日焼けサロンで意図的にガンガン焼いてこんがり綺麗な小麦色の肌にする、ようなイメージ)
本来の良さを引き出すための処理なのでとても一般的です。
トリートメント(=ニューヒート、含浸処理)
加熱時に『鉛ガラス』を宝石に染み込ませる(含浸)処理です。
そのため「含浸処理(がんしんしょり)」と言ったり、その処理を施されたルビーを「含浸ルビー」と呼んだりします。もともとキズなどがある原石に鉛ガラスを染み込ませ、それが固まる事で、透明度と耐久性を改善する目的で施されます。これが近年の新しい特殊な加熱処理です。
(色のついたオイルや樹脂を充填した場合や放射線照射をした場合は、改変とみなされ、トリートメントと認識されます)
この含浸処理、という処理が鉛を含むルビーを作る秘密だったんですね。
含浸処理でつくられたルビーのメリットデメリットを詳しくみていきましょう!
含浸処理ルビーのメリット×デメリット
非加熱ルビーや加熱処理のルビーと比べてどんなメリットデメリットがあるかを見ていきます
メリット
・価格の安さと大きさ
ルビー自体希少価値が高いものですので大きさが大きくなるにつれ、綺麗なルビーの数も少なくなってきます。なので天然の大きなルビーに出会うことは極めて困難&あったとしても高価になってきます。しかし、含浸処理のルビーは綺麗ではないものを直していくので大きなものに出会える可能性は高くなります。
デメリット
・傷がつきやすい
特殊な処理を施しているためかキズが埋まりきれてないなどの理由で、肉眼で見えるもの・見えないもの、ルーペを使って見えるものなど様々ですが傷がついているものもあります。
・脆い
耐久性を改善する目的で処理をしたのに、意外と脆いんです。以下の研究結果が出ています。
現在市場に流通している鉛ガラスが含浸処理されたルビーを入手し、酸への浸漬実験を行って外観や重量の変化を調べた。その結果、加工やリペアの過程で酸洗いの際に標準的に用いられる溶液への浸漬によって、表面がわずかに腐食された。ただしこのような腐食による表面状態は、わずかな再研磨によってもとどおりに復元することができる。また、フッ化水素酸溶液へ浸漬させて鉛ガラスを溶解させた結果、はっきり重量が減少することが認められ、処理の程度がひどいものでは減少の程度が10%近くにも及ぶものがあった。
これらの結果から、鉛ガラスが含浸処理されたルビーは、その処理により重量が増加しており、酸にも腐食されやすいことが確認された。現在市場には、鉛ガラスがさまざまな程度に含浸処理されたルビーが流通しており、今後一層の注意が必要であろう。出典:過度に鉛ガラスが“含浸処理”されたルビーの耐久性
いかがでしたか?
様々な処理で希少なルビーの原石を商品にしようとしているんですね。
その結果、無処理のルビーがいかに価値が高いかが改めてわかります。
それぞれの処理を女性に例えると、無処理は「すっぴん美人」、エンハンスメントは「化粧美人」、ニューヒートは「整形美人」という感じでしょうか。そんな宝石との出会いを大切にしていきたいです。