今回は、上品な薄い紫カラーを持つクンツァイトについてご紹介したいと思います。この宝石は、1902年にアメリカで有名な宝石博士であったクンツ博士に発見された比較的新しい宝石で、発見者の名前にちなんで『クンツァイト』と名付けられました。発見当初はトルマリンの変種だと考えられていたそうです。ちなみに、アメリカのカルフォルニア州で発見されたことから「カリフォルニア・アイリス」という別称も持っています。
今回は、そんな美しいクンツァイトの基礎知識をご紹介します。
クンツァイトの基礎知識
宝石名 | クンツァイト |
---|---|
和名 | なし(鉱物名:スポジュメン、その和名を黝輝石(ゆうきせき)、もしくはリシア輝石(リシアきせき)といいます) |
英名 | kunzite |
主な産地 | ブラジル、マダガスカルなど |
モース硬度 | 6.5~7 |
屈折率 | 1.66~1.68 |
それではクンツァイトの基礎知識を簡単にご紹介しましょう。クンツァイトは、リシア輝石の中でピンク〜紫色をしているものを指しています。鉱物的には、スポジュメンに属しており、ギリシャ語で「灰色」を意味するその名前の通り、本来スポジュメンは無色や黄色がかった灰色をした地味な石なのです。しかし、リシア輝石内部のアルミニウムイオンがマンガンイオンに置き換わることで、クンツァイト特有の上品なカラーを発色します。
カラーバリエーションとしては、薄ピンク~赤紫色のものがあります。なおクンツァイトは、多色性が強く、角度を変えると薄いピンク色とやや濃いピンク色の二色性を示します。注意が必要なのは、色合いを調整するため、頻繁に加熱処理をされたり放射線照射処理などをされることと、明るい光や熱にさらされると美しいカラーが退色してしまうことがある点です。
リシア輝石とは
桃色の彩色はマンガンイオンに、緑色の彩色はクロムイオンの色中心、または鉄イオンとマンガンイオンにそれぞれ起因し、黄色の彩色は未知の構造による色中心であり、一部の石はシャトヤンシーを示す。宝石として扱う場合、割れやすいので加工や取り扱いには十分な注意が必要。また、色中心による着色のものは退色性があり、光に対しても特別な配慮を要する。
桃色や紫色のものはクンツァイト (kunzite) 、黄緑色や緑色のものはヒデナイト (hiddenite) 、黄色のものはトリフェイン (triphane) という。
クンツァイトのカラー分類やカットについて
クンツァイトは美しく上品なカラーを持つことや、多色性があることから近年非常に高い人気があります。色としては、ピンク、グリーン、イエローなどと変化量が豊富で、特にグリーン(ヒデナイト)はその希少性の高さから評価が高いです。基本的にピンクカラーを持ったものをクンツァイト、グリーンカラーをヒデナイト、イエローをトリフェーンと呼び、ピンク色を強める時には照射や加熱処理が行われる事が多いです。
カットについては、クンツァイトが一方向に割れやすい『へき開性』を持っているため、宝石としてカットするのは非常に難しいとされます。しかし、ジュエリーに利用される場合には、その美しい色合いをより強調するためファセットカットが施され、ペンダントトップなどに利用されます。
お手入れ面の注意点
上述したように、クンツァイトは明るい光や熱にさらされると退色してしまう可能性があるという弱点を持っています。しかし、中には退色した後でも十分美しいから気にしないという人もいるようですね。
ただし、クンツァイトは、変色してしまうと透明度が落ちてしまう…という場合もあるため、できるだけ変色しないような対応をするのが望ましいです。クンツァイトの保管時には、日光が『常』に当たる場所、高温多湿、極度に乾燥している場所にむき出しで置いておくことはNGです。身に着けていない時などは、きちんとジュエリーボックスなどを用意して保管するようにしておきましょう。
日々のお手入れ面では、『へき開性』があることや水が苦手という面があるのを注意しましょう。熱湯や超音波洗浄機などの使用は避けて、日々のお手入れは乾いた布できちんと拭くという習慣づけが重要です。汚れがひどい場合には、柔らかい歯ブラシに中性洗剤をつけて、ぬるま湯で洗浄しましょう。洗浄後はきちんと水分はとってください。
まとめ
今回は、上品で美しいカラーを持つクンツァイトについてご紹介しました。クンツァイトは、宝石の中でも特に上品に見える薄い紫カラーを持っていることや、多色性があるということから、近年非常に高い人気を誇っています。しかし、この宝石は、明確な弱点をいくつか持っていますのでお手入れや保管時には細心の注意が必要になると頭に入れておきましょう。衝撃などにも弱いので、身に着けている時に不注意でぶつけてしまわないようにしましょう!